各産地染織品
伊兵衛織
(いへえおり)
静岡県浜松市の旧家・高林家で織られている紬です。特徴として、繭から手紡ぎした玉糸を通常より太く撚り合わせた絹糸にあります。手仕事で丁寧に染められ、手織りで織り上げられた地厚な布は、ふっくらと温かく冬でも単衣でお召しになれます。
牛首紬
(うしくびつむぎ)
石川県白山市・白峰地方で織られている紬です。二匹の蚕が一つの眉を作る「玉繭」から挽かれた糸を使うため節のあるしっかりした糸となります。この糸を用いて織り出された牛首紬は別名釘抜き紬と言われるほど頑丈で光沢のある独特の風合いとなります。
【伝統的工芸品】
越後上布
(えちごじょうふ)
深い雪に閉ざされる雪の越後で、乾燥に弱い手績みの苧麻糸を雪の湿度に助けられながら長い時間をかけて織り上げた越後上布。早春の雪晒しにによって仕上げられることで白はより白く、色柄も冴えてきます。「雪の中から生まれる織物」の名に相応しい、ひんやりと涼やかな肌触りが特徴です。
・昭和30年(1955年)重要無形文化財指定にされました。
小千谷縮
(おぢやちぢみ)
小千谷縮は江戸時代初期、播麿明石藩士だった掘次郎将俊が、小千谷で盛んに織られていた越後麻布を改良し、サラサラとしたシボのある独特な風合いの麻縮を完成させたのが始まりです。肌に付かず、さらりとした清涼感のある小千谷縮は、古くより夏の衣料として高い評価を得ていました。現在流通しているものは殆どがラミー糸を用いたものですが、経緯共に手績みの糸を使い、手括りの絣、地機で織られたものは国の重要無形文化財に指定されています。 ・ 昭和30年(1955年) 重要無形文化財指定にされました。(小千谷織物共同組合 小千谷の織物から引用)
【伝統的工芸品】
本場大島紬
(おおしまつむぎ)
主に鹿児島県鹿児島市と奄美大島で織られている絹織物です。製造工程は図案化・糊張り・締機・テーチ木染め・泥染め・手織り・検査など30近くにも登り、半年から一年を費やし一枚の反物を仕上げます。特徴的なのがその染織方法です。テーチ木といわれる奄美地方特産の植物と奄美大島でしか産出されない泥に交互につけ込み、それを数回繰り返すことで、深みのある独特の褐色色が生まれます。本場大島紬には、奄美大島産のものは地球マークのものが、鹿児島市産のものは旗印の証紙が付けられています。
【伝統的工芸品】
・本場奄美大島紬協同組合
・本場大島紬織物協同組合
加賀友禅
(かがゆうぜん)
石川県金沢地方で作られる宮崎友禅斎を始祖とし、落ち着きのある実写的な草木模様を中心とした絵画調の柄行が特徴です。五彩と言われる藍、 臙脂、黄土、草、古代紫を基調とする紅系統を生かした多彩調に線の太さやぼかし、虫喰いなどの技法は、加賀百万石の武家文化で培われた落ち着きのある趣となっています。
【伝統的工芸品】
・協同組合 加賀染振興協会
本場黄八丈
(ほんばきはちじょう)
東京都八丈島で古くから伝わる絹織物です。江戸幕時代ではその品質のよさから租税として上納され、町人の着用が許されるようになってきてからは、大変な人気となりました。八丈島に自生する草木を染料とした純粋な草木染めで、絹糸を「黄」「樺」「黒」に染め、すべて手織りで縞模様や格子模様に織り上げられます。
【伝統的工芸品】
久米島紬
(くめじまつむぎ)
沖縄県の久米島に伝承されている絹織物です。その歴史は古く、14世紀末頃に「堂の比屋」が中国に渡り養蚕技術を学んで帰ったと言われています。17世紀には琉球王府の年貢布に定められて、以来制作技術が高度に発展しました。一人の織子が糸紡ぎから織りまでの全ての工程を手掛けることが久米島紬の特徴で、伝統的な久米島紬特有の黒褐色は、島の植物による染めに泥染めを重ねることにより生まれる独特のお色です。
・平成16年 国の重要無形文化財として指定されました。
【伝統的工芸品】
久留米絣
(くるめがすり)
福岡県久留米市で製造される木綿織物です。江戸時代に12歳だった井上伝によって発明されました。藍染めの糸を丹念に織りなし、藍と白で絣模様を生み出します。シンプルながらも素朴な味わい、着るほどに肌に馴染むその風合いが魅力の織物です。手括りによる絣糸を使用すること、純正天然藍で染めること、なげひの手織織機でおること、の指定要件を満たした作品は、国の重要無形文化財に指定されています。
・昭和32年1957年 国の重要無形文化財に指定されました。
【伝統的工芸品】
郡上紬
(ぐじょうつむぎ)
厳選された国産の春繭から紡いだ糸を用い、草木で染め、丹誠込めて織り上げられる郡上紬。ふっくらと柔らかな風合いと美しい光沢はその糸質の良さを物語っています。美しい光沢と丈夫さを出すために、染材をたっぷり使い、繰り返し繰り返し染められます。それゆえ、着れば着るほど洗えば洗うほど深みと艶を増してゆき、その高い技術を感じさせるのです。
ざざんざ織
(ざざんざおり)
玉糸と真綿との二種類の糸を使うため、糸の太さに変化があり、そこから生まれるムラが特徴となっています。どっしりと地厚ながら、しなやかなやかで体の動きに寄り添うような着心地は、ざざんざ織りならではです。
塩沢紬
(しおざわつむぎ)
新潟県の塩沢地方で織られる絹織物で、当地方で織られていた麻布(現在の越後上布)の技術技法を絹織物に取り入れ、江戸時代から織り始められました。塩沢紬は経糸に生糸や玉糸を緯糸に真綿の紡ぎ糸を用います。手括りにより染めを施し、染め分けた絣糸を使って文様を織り出す絣模様が特徴で、渋い色調のものが多く見られます。また、同地方で織られる本塩沢は塩沢お召しとも呼ばれ、緻密な絣模様と細かいシボが特徴です。
【伝統的工芸品】
科布
(しなふ)
新潟県と山形県の県境の雪深い羽越国境で織られる古代織物(原始織物)です。科布の原料である科木は高さ20mほどになる落葉植物で、その樹皮繊維を織糸として使用します。丹念に織り上げられた科布は、ざっくりとした織り感が特徴で、通気性がよく・軽く・水濡れにも強く、使うほどに木肌の艶が増します。
首里織
(しゅりおり)
沖縄県那覇市周辺で織られる琉球織物です。東南アジアや中国と盛んに取引があった、14-15世紀の琉球王国時代に生まれ、その海外との交流より染織の技術がもたらされました。首里王府の城下町として栄えた首里で、王府の貴族や士族用にと、色や柄など格調高い麗美あ織物として発展しました。現在は花倉織、絽織、首里花織、道頓堀(ロートン)織、手縞、綾の中、ムルドゥッチリ(総絣)の7種類を中心に受け継がれています。
【伝統的工芸品】
信州紬
(しんしゅうつむぎ)
長野県全域で生産される織物で、代表的な「飯田紬」「伊那紬」「上田紬」などを総称して「信州紬」と呼ばれています。製造の行程を分業せずに行い、真綿のほっこり素朴な風合いと草木染めのやわらかな色合いが特徴です。
【伝統的工芸品】
・飯田紬
長野県天竜川沿いの飯田地方で生産されている織物です。製糸が盛んな頃に製紙用の繭を出荷した跡の屑繭をつむいで織ったのが始まりと言われています。無地や縞・絣などのシンプルな文様が特徴で、現在も多くは手織りで織られています。
・伊那紬
信州伊那谷で生まれた手織りの織物です。生糸、山繭糸、玉糸、真綿の手紡ぎ糸など、緯糸には玉糸か真綿の手紡ぎ糸を使い地元伊那谷で手に入るくるみ・リンゴ・ヤマザクラなどの染材で手染めされ、軽くてやわらかくしっとりしとした風合いです。
・上田紬
長野県上田市周辺で織られた織物です。上田紬は昔より三裏紬とよばれ、表地一枚につき裏地を三回取り替えることができる程、丈夫だというのが由来です。
精好仙台平
(せいごうせんだいひら)
宮崎市仙台市で作られた絹織物です。江戸時代中期ごろに京都より技術が伝わり、伊達藩の保護奨励策により発展しました。座れば優雅なふくらみを保ち、立てばさらりと折り目立ち、すだれにように端然と形が整い、張りがあっても固くはなくしなやかであるという相反する特徴を持ちます。すべての動作に耐えうる袴と各界から絶大な信頼を集めています。
・甲田綏郎氏が国の重要無形文化財技術保持者として指定されています。
丹波布
(たんばふ)
明治末期まで丹波佐治の地(現兵庫県氷上郡)で織られていた木綿です。木綿の織物の緯糸に絹を交織し、縞柄が特徴の丹波布、昔から街着として用いられてきました。機械機織に押され明治末期に一旦衰退しましたが、昭和初期日本民芸創設者の柳宗悦によって再発見され復元されました。野にある草木で染め、手織りで仕上げられ、絹糸をつまみ糸として緯糸に入れるのが特徴です。
南部紫根染・茜染
(なんぶしこんぞめ あかねぞめ)
岩手県南部地方に古くから伝わる手法を守り続ける、盛岡の工房・草紫堂で作られる草木染めの製品です。紫根染はムラサキ、茜染めはアカネの根からとった染料です。微妙に異なる手絞りのにじみの美しさと、年を経るほどに味わいが増す色の変化が特徴です。
芭蕉布
(ばじょうふ)
糸芭蕉の栽培から始まり、糸を積み、染め織り上げるまで気の遠くなる様な時間と手間をかけて作り上げられる沖縄県喜如嘉の芭蕉布。独特の強い張りがありひんやりとした手触りが特徴です。
・昭和49年(年)国指定の重要無形文化財の総合指定となりました。
紅型
(びんがた)
沖縄地方で作られる染め物です。琉球王朝の王府の保護のもと日本本土や中国・東南アジアの文化んぼ影響を受けながら発展してきました。南国情緒溢れる鮮やかで大胆な柄付けが特徴です。
【伝統的工芸品】
宮古上布
(みやこじょうふ)
苧麻を原料とした麻織物で、沖縄県宮古島地方で作られています。琉球藍や島の草木で染めされた極細の手積みの苧麻糸で、緻密な絣模様を織りだします。砧打ちの仕上げによって美しい光沢が生まれる繊細な地風、涼やかに透ける蜻蛉羽のような美しさが特徴です。
1978年(昭和53年)に国の重要無形文化財に指定されました。
【伝統的工芸品】
綿薩摩(薩摩絣)
(めんさつま さつまがすり)
極細の木綿糸を使い、大島紬とほぼ同様の工程を経て織り上げられる薩摩絣。東郷織物の永江明夫が大変な試行錯誤の上、完成させました。収縮率の高い木綿ゆえに織りの工程が非常に難しく、織り手は高い技術と熟練を要します。大島紬や結城紬の着物を着尽くした人が最後に行き着く着物、と言われ、「木綿のダイヤモンド」と称されるすばらしい質感としなやかさは、かつて武者小路実篤氏からも「誠実無比」の織物と高く評価されました。
八重山上布
(やえやまじょうふ)
沖縄県八重山地方で織られる苧麻糸を素材とした麻織物です。琉球王朝時代に人頭税の御用布として織られることで技術が発展しました。宮古上布が紺地の絣の織物であるのに対し、八重山上布は白地を基調としています。通気性に優れ夏の衣服としては最適です。
【伝統的工芸品】
結城紬
(ゆうきつむぎ)
茨城県・栃木県を主な生産の場とする絹織物です。真綿から丹念に手で紡ぎ出された糸を経糸に用いて織り上げられます。着込む程に風合いが増し、手紡ぎの軽くてふっくらとしなやかな風合いが特徴です。
昭和31年に国の重要無形文化財に、
※使用する糸はすべて真綿より手紡ぎしたもの、絣模様は手括りによるもの、地機で織ることが条件
【伝統的工芸品】
読谷山花織
(よみたんざはなおり)
細やかな点と線の幾何学模様で刺繍のように可憐な花を織りだしている読谷山花織、明治の半ばに一旦は技術が途絶えましたが、大変な苦労の末、與那嶺貞さんが復元に成功、現在は読谷山花織事業協同組合も設立され、通産大臣指定の伝統的工芸品となりました。
重要無形文化財指定技術保持者・與那嶺貞
【伝統的工芸品】